国立大学の独立行政法人化について

 国立大学は,わが国における人材の育成.研究の発展,地域文化の向上に童要な役割を果たし,戦後の日本社会の発展にも大きく貢献し,その事実は国際的にも広く認知されてきた.最近.順調に発展してきたわが国の経済が行き治まりを見せ,行財政改革の必要性が叫ばれており,その一環として国立大学の民営化あるいは独立行政法人(エ−ジェンシー)化が論じられている.もとより行財政改革は避けて通ることのできない課題であり,国立大学としても協力を惜しむものではない.しかし現在論議されている独立行政法人は,定型化された業務について,短期間で効率を評価しようとするもので,個性的な教育と,自由闊達な研究を長期的な視点から展開しようとする大学には,ふさわしいものではない。

 21世紀には技術革新の加速と,国際競争の激化が予想され,創造力のある人材の育成と新しい時代を拓く学術研究の推進が急務となっている。そのため大学の果たすべき役割は更に大きくなるものと予想される.そこで国立大学では,過去数年にわたって自主的な改革を進め,一定の成果を挙げてきたが,まだ残された課題も多い.従って今後更に広い視点に立って改革を推進し,国際的な競争力を高めていく必要がある。このような情勢下で,財政的な視点のみから性急な設置形態の変更を行うことは,わが国の高等教育と研究の発展を阻害する恐れが極めて大きい。

 このような理由から,第101回国立大学協会総会では,現在の独立行政法人案を国立大学に適用することに反対することを全会一致で決議した。今後わが国の大学における教育,研究の将来構想を21世紀の国際社会を見通した論議を通して一日も早く確立し,その線に沿った大学改革を進めていかなければならない。

平成9年11月13日    国立大学協会


 第101回国立大学協会総会は.その議論をまとめて,当面の課題として次のことを決議した.(1)学長が,全学的な視野から教育,研究の改革ができるようにするため,評議会,学部教授会等大学の組織運営のあり方を各大学において早急に再検討する。(2)大学において教育.研究を活性化し,若手研究者を育成するため,教員任期制の導入を含め,教員任用の方法の刷新を図る。さしあたり任期制を実施できる組織あるいは単位から実施する。(3)入学者選抜方法については,すでに指標の多様化がかなりの程度に進んでいるが,今後それを一層進めて学力試験への偏重を避ける。そのためAdmissionOfficeの設置を文部省に要望する。