文部科学省御中

国立大学独法化阻止全国ネットワーク    

代表 山住 正己(東京都立大学名誉教授)
事務局長 豊島耕一(佐賀大学教授)  
 事務局 佐賀大学理工学部 豊島研究室
電話・ファクス 0952-28-8845  

このたびは会見に応じていただき,ありがとうございます.

私たちは,貴省において現在検討されている,国立大学を独立行政法人化するという政策は,学問の自由を侵し,また教育基本法の「不当な支配」排除の条項に違反する恐れが大きいと考えています.貴省のお考えを伺いたく,以下の事項をお尋ねいたしますので,詳しくご回答をお願いします.

2001年10月1日

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質問事項

A 独法化問題(中間報告を中心に)

1. 文部省(当時)は1997年に「独立行政法人化反対」を宣言しているが,これを撤回し推進に態度を変えた理由は何か.

2. 欧米の大学は国立大学や州立大学のままで法人格を持っているが,我が国でこのような制度(例えば国立学校設置法の改正で国立大学が法人格を持つようにする)がとれない理由は何か.また,独立行政法人制度以外での法人格付与の可能性について検討されたか.

3. 政府による目標の指示、実行計画の認可というような「独立行政 法人」的手法を採っている例が,欧米の大学にあるか.

3a. 中間報告によると「中期目標」「中期計画」に含まれるべきことがらが包括的であり,また含まれるべきでないことがらについての規定ががない.これが省令など政府によって決められるということになると「不当な支配」に対する歯止めがなくなると考えられるがどうか.教育・研究の内容にかかわるような事は明確に除外されるのか.また,構成員の思想,信条,内心の自由に踏み込むようなことがら,例えば「日の丸・君が代」の実施なども明確に除外されるのか.

4. 「文部科学省におく」評価機関を「第三者機関」と呼ぶ理由は何か.「第三者」とは,大学と政府という当事者を除くという意味ではないのか.

4a. このように政府機関が直接大学を評価し,それに予算配分を直結させる制度を取っている国を例示して欲しい.

5. 「非公務員型」を採用し,教育公務員特例法による教員身分の保護を解除した場合,ユネスコの「高等教育教職員の地位に関する勧告」に反するのではないか.

6. 独法化すると文部科学省と「大学法人」とは「中期計画」などをめぐって許認可するものとされるものの関係になる.後者の役員等に文部科学省OBが就任するとすれば,禁止の対象の「天下りに」なると考えられるがどうか.

7. 「監事」の権限に触れた箇所で,「監査にあたっては,・・・各教員による教育研究の個々の内容は直接の対象としない」とあるが,個々の内容でなければ,例えば全般的な傾向については教育研究の内容も監査の対象とする,というようにも読める.どうなのか.

8. 同じく,役員構成の部分で「有識者」という言葉が何度も出てくるが,その定義は何か.一般の勤労者・市民の代表がこれらに入ることはありえないのか.

9. 同じく,「教授会における審議事項を・・・重要事項に精選する」とあるが,これは同時にそれに「制限する」という意味か.それとも教授会は自由に何が「重要事項」であるかを,つまり何を審議事項とすべきかを決定する権限があるとするのか.

B 「遠山プラン」,大学問題一般

10. 去る6月の国立大学学長会議での,「脅し」に従わなければ「見捨てる」という発言は,文部科学省から国立大学への事実上の命令であるが,これはどのような法的根拠によるものか.

11. ユネスコの「21世紀の高等教育に向けての世界宣言」の第2条は,高等教育の「倫理的役割、自律性、責任、および先見的機能」を述べており,社会に対する批判的機能を要請しているが,大学に対する政府からのどのような関与や規制が行われるとこの機能がそこなわれると考えているか.

12. 同じく宣言は,学生を高等教育の革新における主たるパートナー,当事者とみなさなければならず,また大学運営にも学生が関与すべきだとしているが,中間報告にも,また文部科学省の政策全般にもこのような態度は見られない.今後ユネスコの方針に適合するように変えていく用意があるか.

13. 私学だけでなく国立大学の授業料も世界的に高額な水準にある.ユネスコは高等教育の授業料無料化の導入を勧告しているが,この条項を無視するつもりか?

14. 競争的経費としてはすでに科研費があるが,これではその割合がまだ不十分だと考えるのか.その理由は何か.

以上